世界中でLGBTQとのワードが飛び交い、性的マイノリティへの理解が進む世間の流れの中で、日本の婚姻制度では、同性婚が認められていません。この記事では、「なぜ、日本では同性婚ができないのか?」「婚姻の代わりになる制度」など、日本における同性婚の問題点について考えていきます。
同性婚…日本の現状
憲法24条1項
憲法24条1項で「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない」と定めており、この「両性の合意のみに基づいて成立」との部分が日本では同性婚を認めないとの解釈とされ、これまで進んできました。しかし、近年では、この憲法解釈は誤りであるというスタンスが主流であり、日本政府としても、現行の官房長官が「憲法24条が同性婚の導入を禁止しているのか、許容しているのか」について、「特定の立場に立っているわけではない」との見解を表明しています。
海外の同性婚事情
憲法24条1項にて「同性婚を禁止している訳ではない」との見解であっても、現在の日本では、同性婚を認められるまでには至っていません。海外と比較すると、同性婚を初めて法律で認めた国はオランダで、2001年の事でした。それから20数年、各国で同性婚が認められる中、日本は遅れをとっている状況です。
それは、先進7か国(カナダ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本)の内、同性婚または同性パートナーシップ制度が認められていないのは、日本だけということからもお分かりいただけるでしょう。
日本の同性婚に向けた取り組み
日本国内でも、同性婚を認めようとする動きは増えつつあります。国(政府)としては、慎重な姿勢を崩さないとしても、各地方自治体などでは、同性パートナーを認める事案は多くなってきています。また企業では、同性のパートナーがいる社員に対し、異性の配偶者がいる場合の手当てと同じように支給する会社も増えているようです。
日本の同性婚の実情。代わりになる制度
パートナーシップ制度
日本でも、東京の渋谷区や世田谷区などの限られた地域で、パートナーシップ制度という、婚姻関係にあるカップルとほとんど同じ権利を受けとることができる制度を導入してるところはあります。
但し、パートナーシップ制度がある地域の住民であることが必須で、その地域を離れた場合、こちらの制度は適用されず解消が必要です。世界では、パートナーシップ制度を認めているところは、国レベルで導入しているところがほとんどですが、日本では、このように、東京など、しかも「区」別など、極限られた地域でしか採用されておらず、また、パートナーシップを結ぶには、必要な書類の提出が多く、異性婚より手続きに時間を有するなど、弊害は多いです。
養子縁組
同性婚が認められていない日本では、その代わりに家族として法的に認めるためには、養子縁組という方法を選ぶことが多いようです。カップルの歳上の人の方が「親」、もう一方を「子」という戸籍にすることで、親子になり、家族の権利を得るのです。日本では同性カップルにとって、家族になる唯一の方法であるため、この制度を選ぶのです。但し、あくまで、「親」と「子」との立場なので、これに抵抗感を持つカップルも多くいます。
海外での結婚
同性婚が認められている国に住み、住民の資格を得て、結婚するという同性カップルもいます。ただし、海外では婚姻関係と認められたとしても、日本ではそれを認める制度は勿論ありません。もしも、日本で暮らしたいと、移住をしようと思っても、日本では夫婦として生活をすることはできないので、諦めている同性カップルもいるようです。
同性婚はなぜ求められるのか
代わりになる制度では不十分
これまでご紹介してきた、同性婚の代わりの制度では、どうしても、異性との結婚制度と同類の条件やサービスなどが受けられないことがわかっています。愛しあう2人が、同性であるというだけで、この「結婚」というものができないのは、当事者にとって、理不尽と思うことは理解できることではないでしょうか?
相続ができない
長年パートナーと連れ添い、一緒に生活をしていたとしても、婚姻関係がない2人には、どちらかが死去したあと、遺言がなければ、パートナーの財産を受け継ぐことはできません。勿論、婚姻関係があれば、そのまま受け継げます。たとえば、それが一緒に住んでいた家だとしても、法的には、赤の他人が住んでいることになり、立ち退きをよぎなくされるのです。
同じ国で生活ができない
日本人が外国人のパートナーと一緒になりたいと考えた時、異性であれば、日本にて婚姻関係を結べば、配偶者として、日本で生活をする権利が得られるのに対し、同性であれば、結婚ができないので、この制度を利用できません。日本で何か仕事をしている場合は、それを理由に生活ができたとしても、外国人のパートナーが失業をしてしまった時、日本にいる資格がなくなる為、安心して生活をすることが難しいのです。
親権の問題
婚姻関係にあるカップルが養子縁組を利用して、血が繋がらない子供をむかえいれふるとき、共同親権者として、2人ともがその子供の親となる事ができます。しかし、結婚ができない同性カップルの場合は、養子縁組をすると、2人とも親の権利は得れますが(実親と養親)、親権者ともう1人は養親の立場となり、1人だけが親権者となるのです。
日本の同性婚がなぜ進まないのか
根強い差別・偏見
日本でも特に表向きは、世の中の風潮や意識などはだいぶ改善されたとはいえ、性的マイノリティへの偏見は強いという見方があります。つい数年前までのドラマでも、登場する、セクシャルマイノリティのキャラクターは、どこか面白おかしく表現されていた記憶はないでしょうか?そのようなこともあり、そういった立場の多くの人々は悩みを隠し、カミングアウトできない状況下にまだあるようです。
保守的な国がゆえ
日本という国は、よくも悪くも、何かを変えようとするにも拒否反応が起きやすいお国柄と言われています。保守的な考えで「同性婚を認めると、少子化が進むのではないか?」といった意見もあるようですが、同性婚を認めている国で、それが理由で少子化に後転したといった事例はありません。慎重に議論する事は必要ですが、保守的であるがゆえ、根拠のないことに時間をかけるのは愚かなことなのかもしれません。
高くそびえたつ法の壁
憲法24条1項の間違った解釈によって、憲法で同性婚は認められていないとされてきましたが、結局のところ、それは誤りであり、憲法によりこれを禁止する効力は無いとされています。ただし、それを容認するような法制度はまだ日本にはなく、「禁止はされていないが、OKとも言えない」といった、中途半端な状態をキープしています。憲法を変えるとなると、相当な労力が必要ですが、憲法自体は禁止とはしていないので、法整備が進めば、この問題は解決します。しかし、この法を整備すること自体の壁も超える事も、これまで紹介したような理由で、日本では容易に進んでいないとの現状です。
他人事ではなく当事者の立場を考える。
性的マイノリティのカップルにとって、同性婚が認められない日本という国はとても生活しづらく、辛い社会などではないでしょうか?多様性を認める社会になってきてるとはいえ、まだまだ不十分な日本。これを苦に自殺する人も多いと聞きます。マジョリティ(多数派)がもう少し、この問題について当事者意識をもって支持する事は重要で、そんな変化を求む、多くの意思が集まる事でこの国を動かすことになるのかもしれません。
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