「私、もしかしたら不妊かも」「不妊治療って大変そう」と不安に感じている人も多いのではないでしょうか。
厚生労働省のデータでは、3組に1組の夫婦が「不妊の不安を感じている」と答えており、不妊治療は子どもを授かりたいと考えている夫婦にとって関心の高いテーマです。
今回は「これから不妊治療について知りたい人」のために、不妊治療の具体的な方法(ステップ)と治療中の大変なこと、乗り越えるコツを紹介しますので、ぜひご覧ください。
不妊治療とは
不妊治療とは、子どもを授かりたいと希望しているにもかかわらず、一定期間妊娠の兆候がみられない夫婦が行う治療のことです。
検査を元に受精しやすいタイミングを計ってセックスを行う方法や、医療機関で体外受精や人工授精を行う方法があります。
女性の就業率や初婚年齢が上がってきた背景から、近年では不妊治療を行う夫婦が増えてきています。
不妊治療をすれば妊娠できるの?
不妊治療を行ったら、確実に妊娠できるのでしょうか。続いて、厚生労働省のデータを元に、不妊治療の現状と妊娠・出産できる確率を解説します。
不妊治療の現状
厚生労働省のデータでは、「不妊の心配をしたことがある」と回答した夫婦は約35%(3組に1組)で、「実際に不妊の検査や治療を受けたことがある」と回答した夫婦は約18.2%(5.5組に1組)存在します。
そして、実際に不妊治療によって生まれる子どもは出生児全体の約7%となっており、約14人に1人の子どもが不妊治療によって誕生しています。そのため、不妊を心配することも、不妊治療をすることも決して珍しいことではないのです。
出典:生殖補助医療による出生児数:公益社団法人日本産科婦人科学会「ARTデータブック (2019年 )」、全出生児数:厚生労働省「令和元年 (2019 )人口動態統計 (確定数 )」
不妊治療で妊娠して出産に至る確率
年齢 | 確率 |
---|---|
25歳 | 約20.9% |
30歳 | 約19.9% |
35歳 | 約16.3% |
40歳 | 約7.7% |
45歳 | 約0.6% |
表は、女性の年齢別の不妊治療によって妊娠・出産できる確率です。
データでは、25~32歳までは不妊治療によって妊娠する確率はさほど変わりません。しかし、33歳以降になると、年を重ねるごとに卵巣の機能が徐々に低下し、妊娠できる確率が減ってきてしまうのが現状です。
現時点で不妊治療を考えている人は、できるだけ早くから始めるに越したことはないでしょう。また、40歳以上の女性も妊娠している人がいるので、子どもを授かりたいと考えている人にはチャンスがあります。
出典:厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」報告書 参考資料16 不妊治療における年齢と生産分娩率(生産分娩数/総治療周期数)
不妊治療の4つのステップ
不妊治療には4つの段階があります。また、治療の段階が進むことを医療機関では「ステップアップする」と表現しています。続いて、具体的な治療のステップと治療内容を紹介します。
ステップ1 タイミング法
「タイミング法」は、医療機関での基礎体温や超音波などの検査をもとに受精しやすい日を推測し、タイミングを計ってセックスを行う方法です。また、医療機関へ行く前に、自分たちで生理周期から排卵日を予測し、妊娠に至る夫婦もいます。
ステップ2 人工授精
「人工授精」は、女性の排卵日に合わせて、男性の精子を注入器で子宮に注入する方法です。夫が無精子症の場合は、「夫以外」の精子を使って人工授精させる場合もあります。
人工授精は治療時の痛みや体への負担が少なく、1回の治療時間も10~15分程度と短いので、比較的繰り返しやすい治療方法といえます。
ステップ3 体外受精
「体外受精」は、女性の体内から取り出した卵子に男性の精子を振りかけて受精卵を得て自然受精させ、子宮内に移植する方法です。
体外受精以降のステップでは通院回数が増え、また、卵子を成熟させるための排卵誘発剤や麻酔薬の使用によって生理痛のような痛みや腹痛や吐き気などの副作用が出る場合があります。
ステップ4 顕微授精
「顕微授精」は、女性の体内から取り出した卵子と男性の精子を、顕微鏡で拡大視しながら受精の手助けを行う方法です。
顕微授精は体外受精で受精が成立しなかったり、精子の数が少ないなどの理由で成立が見込めなかったりした場合の手段です。また、人の手で受精の手助けを行う分、体外受精よりも費用が高額となります。
不妊治療で大変なことは?
漠然と「不妊治療は大変そう」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。続いて、実際の不妊治療で何を大変と感じる人が多いのか紹介します。
体力的な負担
不妊治療では、ステップアップするほど女性側に体力的な負担がかかりがちです。
人によって治療時の痛みや、腹痛や下痢、吐き気などの副作用が出るため、女性の体調を第一に考えて治療を進める必要があります。
精神的な負担
不妊治療の期間は人それぞれです。その分、なかなか思うような結果が出ない場合、精神的に落ち込んでしまうことも。夫や医師、治療仲間のコミュニティなど、気軽に話せる相手を作るとよいでしょう。
セックスへのプレッシャー
特に、妊娠しやすい時期を予測してセックスを行うタイミング法はプレッシャーから「義務セックス」になりがちで、気分が盛り上がらないことがあります。パートナーとの信頼関係やムード作りの工夫が必要になるでしょう。
費用がかかる
今まで不妊治療には保険が適用されず、高額な費用が夫婦の負担となっていました。
しかし、2022年4月の制度改正で不妊治療に保険が適用され、現在ではほとんどの治療が3割負担で受けられるようになりました。「治療開始時において女性の年齢が43歳未満であること」と治療回数の制限はあるものの、費用面の負担は大幅に抑えられるようになったといえます。
仕事との両立が難しい
特に女性は、不妊治療と仕事との両立が難しいケースが多くあります。
厚生労働省のデータでは、約34.7%の女性が「仕事との両立ができない(できなかった)」と答えており、不妊治療のために退職せざるを得ない女性もいるのが現実です。両立が難しいと感じる理由としては、体力的な負担や、治療のスケジュールの調整が難しい、仕事のストレスが不妊治療に影響を与えやすいことが挙げられます。
近年では、フェムテックの推進により不妊治療をサポートする企業が増えており、今後治療と仕事の両立がしやすくなる可能性があるでしょう。
不妊治療を乗り越えるコツ
不妊治療中は肉体的にも精神的にも負担が大きいものです。そこで、不妊治療の大変さを少しでも軽くするコツを紹介します。
適度に運動する
不妊治療中はストレッチやヨガ、ランニングなどの軽い運動を一日30分程度行うとよいでしょう。
運動によって代謝機能とホルモンバランスが改善されると、生殖機能が活発になる効果が期待できるといわれています。また、体を動かすことで心のリフレッシュにもなるでしょう。
息抜きを持っておく
不妊治療中は未来への不安や焦りから、心に余裕がない状態になりがちです。
好きな食べ物や趣味、リラクゼーションなど、自分にとってリラックスできる息抜きがあるとよいでしょう。また、インターネットには不妊治療中の仲間を作れるコミュニティがあるので、人に言いづらい悩みを話してスッキリするのもおすすめです。
周囲と比べない
不妊治療が長く続くと、どうしても人と比べて落ち込んでしまうことがあります。知人の妊娠報告や、町で見かける妊婦さんを見てモヤモヤしてしまうことも。
「モヤモヤしてしまうのは悪いことではない」と自分を受け入れ、また、不妊治療のペースは人それぞれなので「うちはうち、よそはよそ」という意識を心掛けるとよいでしょう。
パートナーとの信頼関係が大切
不妊治療の悩みや状況を誰かに話したくても、不妊治療の経験がない友人や同僚とはどうしても温度差ができてしまうことが多いようです。そのため、一番身近な存在であるパートナーと悩みや不安を話せるような信頼関係を作っておくとよいでしょう。
不妊治療をステップアップするかしないかは夫婦で話し合って決めよう
「もしかしたら不妊かも」と不安になるのはあなただけではありません。今では3組に1組に不妊を心配したことがあり、5.5組に1組は実際に検査や治療を行っており、不妊治療は身近な事柄になっています。
実際には、不妊治療には4つのステップがあり、方法やペースは人それぞれ。100組の夫婦がいれば100通りの治療方法が存在します。
不妊治療で大切なことは、女性の体調を第一に考えて無理しないこと、治療中もリフレッシュできる方法を持っておくこと、そして、夫婦で話し合える信頼関係です。不妊治療でステップアップするかどうか悩んだ時は、夫婦で話し合って決めましょう。